皆さんは「静かな退職」という言葉をご存じでしょうか。「誰にも言わずに会社を辞める事かな?」と思ったそこのあなた、私と同じく不正解です(笑)!正解は、「熱意や主体性を失った状態で最低限の業務しか行わないこと」だそうです。働き方や職場の心理的傾向を表す言葉で、2022年ごろにアメリカで流行し、日本でも若年層やZ世代を中心に「無理をしない働き方」として注目されるようになりました。
特徴的な行動としては、①残業は一切しない②自主的な提案は行わない③昇進などのキャリアアップに関心を示さない④チームへの貢献や積極的な交流を避ける、など。公務員には一定数いるタイプだなと思うのですが、今は売り手市場ということもあり、民間企業にも増えているようです。
「静かな退職」が生じやすい組織には、いくつか共通する特徴があります。①成果や努力が正当に評価されない②成長機会が少ない③長時間労働や休日出勤が常態化している④部下の不満や課題を拾い上げる仕組みがない⑤雑談や相談の文化がなく孤立しやすい⑥経営陣の理念と現実が乖離している⑦給与や福利厚生が市場に比べ見劣りする…など、従業員のモチベーションやエンゲージメントが低下しやすい土壌ができてしまっています。このような土壌により努力が評価されず燃え尽きると、やがて心の中で静かに退職してしまうのだとか。心理的な変化なので表面的には見えにくく、退職勧奨するほど素行が悪いわけでもありません。しかしその人の存在によって組織の活力が失われ、全体の生産性は落ちていきます。今後の影響を考えると、単にワークライフバランスを重視する価値観によるもの、と片づけることもできなくなっていくでしょう。
対策としては、エンゲージメント調査による実態把握、定期的な1on1ミーティングによりキャリア意識を確認、心理的安全性や公正な評価など働き甲斐のある職場文化の醸成、過重労働の是正、などが考えられます。社員が意欲的に働き続けられる環境を整えることは容易ではありませんが、離職予防にもなりますので、一度社内を見直してみてはいかがでしょうか。