穏やかな日差しに春を感じる今日この頃、皆さまお健やかでお過ごしでしょうか。春と言えば「春闘」ですね。例年3月中に回答が出揃う大企業の春闘ですが、今年は人材獲得競争の激化を受けてか2月下旬に早期決着した企業が多く驚いています。 大企業のように易々と賃上げできない中小企業ですが、東京商工リサーチの調査では85%の中小企業が賃上げの意向です。賃上げ率は2%~5%と今年度の実績を11ポイント下回っており、体力や収益力のある大企業との差が開いているのが実情です。賃上げによる費用負担が重くのしかかり、不安を感じる企業も多いと思います。賃上げの出来ない中小企業は人材を獲得・引き留めできないのか?今回はそのあたりを考えていきたいと思います。
株式会社リンクアンドモチベーションの人事コンサルタント・田中允樹さんによると、人は賃金という不満がなくなっても満足するわけではないそうです。例えば賃金や福利厚生、働きやすい環境を提供しても、従業員は企業にメリットこそ感じるものの愛着や貢献意欲を持つとは限らないのだとか。どうやら賃上げだけで簡単に人材を引き留めることはできないようです。
従業員が仕事に対してポジティブな感情を持ち充実している状態を「エンゲージメント」と言いますが、このエンゲージメントが高い従業員は愛着や貢献意欲が高いことがわかっています。エンゲージメントは営業利益率や労働生産性の向上、離職率の低下とも相関があるため、中小企業が意識的に従業員のエンゲージメントを醸成できれば、無理な賃上げをしなくても人材を獲得・引き留めできるかも知れません。
どのような方策が自社に合うかを探るために多くの企業で採用されているのが「エンゲージメントサーベイ」「パルスサーベイ」という調査です。「会社の使命・目的は、あなたの仕事に誇りを与えてくれますか?」「自分の役割以上の仕事をしようという意欲がありますか?」「他の部署やチームから協力を得られる環境ですか?」「自分が行っている仕事について公正に報酬を得ていると思いますか?」などの質問に回答してもらうことで従業員の期待がどこにあるかを探ります。調査結果を参考に従業員が自社に期待するのは何かを見極め、対策に生かしてみてくださいね。
参照:「従業員エンゲージメントに対する誤解と向上の鍵」田中允樹(『企業実務』No.882、p.64)