いつまでも暑さが去りやらぬ毎日ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。山梨県の最低賃金が1,052円に決定しましたね。先月19日に長崎知事が隣接都県との差を縮めるよう山梨労働局へ要望書を提出していたため動向を気にしていましたが、最終的には当初予定より1円高い64円の引き上げにとどまり、ひとまず安堵しています。物価高の中で生活を維持できる水準の賃上げは必要である一方、過度な引き上げによる失業や倒産の増加も懸念されます。今後もその影響や動向を注視していきたいと思います。
最低賃金といえば、最近は「スポットワーク」が広く認知されてきましたね。スポットワークとは、Timeeなどの雇用仲介アプリを通じて労働者が自分の希望する時間に短時間・単発で働く仕組みであり、現在では全国で約452万人の利用者がいると推計されています(パーソル総合研究所、2025.1)。飲食店や物流倉庫といった人手不足の深刻な業種では、すでにスポットワーカーの活用が常態化している例もあり、最低賃金の引き上げが需要をさらに後押しする可能性も考えられます。
手軽に人材を確保できる点は魅力的ですが、人事労務管理の観点からは注意すべき課題も少なくありません。勤怠管理や給与計算にかかる手間、雇用仲介会社への手数料負担、教育不足による生産性の低下、不慣れな作業による労災リスク、そして信頼関係が築きにくいことによる欠勤リスクなど、導入にあたっては十分な検討が必要です。
労務管理の観点から特に留意すべき点は以下の通りです。第1に、スポットワークは労働者が求人に応募した時点で雇用契約が成立し、雇用主には労働基準法の順守義務が発生します。当日の一方的なキャンセルは違法であり、やむを得ない事情がある場合でも必ず労働者の同意を得る必要があります。第2に、雇用契約が成立した以上、労働条件は就業開始前に明示しなければなりません。労働条件通知書を仲介会社が代行交付する場合もありますが、法的な義務はあくまで雇用主側にありますので確認するようにしましょう。第3に、雇用主の都合による休業や早退については、休業手当や賃金を所定支払日までに全額支払う必要があります。さらに、賃金は労働条件通知書に基づき支給しなければならず、一方的な減額は違法です。制服への着替えや業務終了後の清掃など、業務遂行に必要な準備・付随行為や待機時間も労働時間に含まれますので、求人時の就業時間設定にはこうした点を織り込む必要があります。
スポットワークは人材確保の新たな手段である一方、安易に導入すると法令違反や労務トラブルに発展しかねません。活用を検討する際には、メリットとリスクを冷静に見極め、自社の人事管理体制で適切に対応できるかを慎重に判断することが不可欠です。最低賃金やスポットワーカーの労務管理についてお困りの際はいつでもお声がけください。